成川美術館の信条(館長 成川實)
成川美術館は、現代日本画に焦点を絞り、その精華を世に問うユニークな美術館です。特に、戦後の日本画のすばらしさを広く知っていただくのが、当館設立の目的の一つです。
新しい日本画は戦後の日本の歩みとともに進展し、経済大国にふさわしい、世界に誇る日本美を築いています。それは、戦前の淡白な日本画とは著しく異なり、余韻豊かで重厚な表現ですが、まだまだ一般に広く知られるには至っておりません。
現代日本画は、平安時代の「やまと絵」以来の伝統を誇りながらも、色彩を塗り重ね、構図やイメージの刷新や拡張など、芸術として一層の深化を遂げています。国際化した現代の複雑な感情も画背に塗り込められています。そうした新時代の美術運動を画する最初の指標として、昭和23年1月に結成されたのが「創造美術」です。その新しい潮流の先頭に立って日本画を牽引したのが山本丘人であり、その作品が当館のコレクションの中核となっています。
当館の約4千点の収蔵作品は、現代日本画を総覧するにふさわしい内容ですが、当館の目標はそれだけではありません。新しい日本画の未来を切り開くことこそが真の使命と考えております。停滞することを恐れ、日本画の危機を常に喚起した山本丘人の望みもそこにあったと考えられます。
当館は、有名作家・実力作家を顕彰するだけではなく、無名であっても将来有望な画家、世に未だ知られていない気骨のある芸術家たちをいち早く認め、それらの作品を精力的に収集・展示してまいりました。功成り名遂げた大家の過去の業績だけを追認して紹介することだけが現代美術館の役目ではありません。美術館も画家も生きています。ともに時代の豊かな感情を生き生きと具現化しています。
50年、100年後の日本画の未来を左右する優れた作品が日々生まれています。こうした未来の名画に込められた貴重なメッセージを可能な限り読み取り、今後も、美術を愛好するご来館者とともに、未来志向の日本画家を応援する所存です。
当館収蔵の代表作の中には、将来の重要美術品候補が多数存在していると確信しております。ご来館された皆様、21世紀の美術を築く有能な日本画家たちの渾身の作品をどうぞご堪能ください。今を生きる芸術家の成長を一緒に見守ってください。世界に誇る日本美の輝きが、ここにあります。
館長 成川 實