【今週の1点】堀 文子「ブルーポピー」
2013.01.04
標高5000メーター級の高地に咲くホリデュラ、その原生種だけを「幻の花」ブルーポピーと呼びます。2000年7月、82歳にして堀文子は、この「幻の花」を探しに、ネパール・ボカラ地区へと旅立ちました。
ヒマラヤの山間部の荒々しい岩場を、息を切らしながら必死に登りつづけ、ようやく見つけることができたとき、画家には草花の仲間ではなく、まるで宇宙の落とし子のように見えたといいます。そして、外形を写しただけでは到底その凄さは表現できないと思うぐらい、外界から孤絶して咲くこの青い花は、威厳に満ちていました。
本作では、群青の清楚な花びらが、まるで金色の棘と固い葉の鎧をつけたように峻厳に描かれ、周りを柔らかな黄金の光が包みあげています。岩山の中で人知れず咲くブルーポピーは、まるで聖者のごとき清らかな輝きを放っています。