【今週の1点】加山又造「猫」
2013.02.01
菱田春草の「黒き猫」、竹内栖鳳の「斑猫」、小林古径の「猫」など日本画の歴史のなかで猫を描いた名作は多くありますが、加山又造もまたこれに堂々と挑戦し、それら名作に勝るとも劣らぬ「猫」を描きあげ、現代の名作となりました。本作は猫と牡丹を描いた加山作品の中でも、出色の出来栄えであるとの高い評価を得ているまさに当館を代表する逸品です。
この作品は、華麗さと墨の渋さを対比させながら墨色調を全体にゆきわたらせ、しかも克明な写生に基づいて東洋的な写実を徹底させた点において見事な完成度をもっています。また、モデルの猫もシャム猫と現代的で、特に眼の青が印象的です。画面では、猫と相対する牡丹も大きな比重を占めていますが、牡丹は富貴の花といわれ、日本画においては普遍的なモチーフですが、本作では一段と豪華絢爛に表現されています。
このように加山又造は、鋭く洗練された感覚と卓越した技巧で独自の芸術を確立し、現代日本画家で最も人気のある作家となったのです。