【今週の1点】山本丘人「星空の牡丹」
2013.02.08
丘人は自作についてあるとき、「全面虚構空間の所産。ある日の幻想である」と語っています。つまりその作品は丘人の花であって、自然の花の写しではないということであり、丘人の花の絵は、花鳥画という常識的なジャンル分けにはあまり馴染まないと言えます。本作について丘人は次のように語っています。
「黒い空間に純白の花をと意図したが、偶々牡丹の花を知人にいただき、これを素描して画く。空間はそのまま空間であってはと、星空の下の幻花とした」
その筆跡を残さない白い花びらは、妖しく透けて風化していき、透徹したはるかな宇宙を感じさせる中国宋元の花鳥画に匹敵する深さです。「西洋画が白の絵画精神で画かれたものなら日本画は黒の絵画精神で画かれたもの」と丘人は語っていますが、この作品の白と黒は洋の東西を越えた摩訶不思議さを感じさせます。黒い星空に映える牡丹の白が、永遠の深い空間と過ぎ行く美の儚さを物語っているのです。