常設展示(中国の秘宝)
- こちらの展示品は、常設展示されています。
神秘の宝石 -翡翠(ひすい)-
翡翠は、深緑の半透明な宝石のひとつ。東洋(中国・日本)、中南米(インカ文明)では古くから人気が高い宝石であり、金以上に珍重された。なかでも、この翡翠の彫刻のように、美しく透(す)き徹(とお)った碧(みどり)色のものは最高のものとされ、神秘の宝石として人を魅了する。
翡翠はおよそ5億年前、地下深い場所で熱と圧力を受けてできた一種の変成岩で、宝石の名に値する翡翠が採れる場所は、世界でミャンマーなど数箇所だけである。日本では新潟県糸魚市姫川流域などに見られるが、5千年以上前の縄文時代に発見されている。
- 吉祥家園 (きっしょうかえん)
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この翡翠の作品は中国の2人の名匠が2年の歳月をかけて彫り上げた傑作である。
立体的な透かし彫りの技法を取り入れ、翡翠の玉石をまるごと使い、ー対の錦鶏とカササギ、青々としたヘチマや牡丹、キリギリス、そして枝葉が茂る藤などをひとつひとつく透かし彫りしている。最上の翡翠特有の美しい碧を効果的に表しながら、穏やかな田園の趣と吉兆的なオーラをを醸す作品に仕上げている。故に作品の名前は「吉祥家園」と称される。
ここに登場するものは中国では喜びや吉兆を表すものである。
【錦 鶏】…豪華・富貴を象徴する。錦鶏が人間のように、「文」「武」「勇」「仁」「信」という儒家の道徳を持つと、特に趙佶帝(中国・宋)に愛された。
【カササギ】…吉報を伝え、めでたいことの起こる前兆とされる鳥。
【牡 丹】…中国の国花である。吉祥・幸福・繁栄・昌盛を象徴する。
【糸 瓜】…ヘチマの糸と糸が相連なるようによい縁組をすることを象徴。
【キリギリス】…多産を意味する。
昭和62年(1987年)3月31日
中国工芸品進出口公司天津分公司より輸入
悠久の歴史 -中国の象牙(ぞうげ)彫刻-
象牙彫刻は中国において悠久の歴史を持つ。先史時代から現在に至るまで、あらゆる時代に芸術作品として受容された。象牙はきめ細かく温潤で、自然な光沢に富んでいるために、工芸の主流をなしてきた。1989年野生動物保護関連のワシントン条約の締結により、中国では象牙の輸入制限措置がとられ、大きな象牙彫刻はほとんど見られなくなった。また象牙は、印鑑の高級素材としても人気が高い。
- 華夏文明 (かかぶんめい)
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中国・悠久の歴史を繊細な象牙彫刻で表した稀に見る名品である。
本作品は透かし彫りの技法を使い、象牙の最上端の部分に龍の首の姿を彫りつけ、そこから下まで、順次に「(盤古(ばんこ))宇宙を開闢(ひらき)」「大禹(たゆう)治水」「春秋戦国」「始皇帝天下を統一」「シルクロード」「三国の鼎立(ていりつ)」「文成公主西蔵(チベット)に入る」「両宋風雲」「成吉思汗(ジンギスカン)」「鄭和(ていわ)の遠洋」「清(しん)の入関」という中国歴史の故事の画面を彫刻している。
作品の頂端にある龍の首は、中華民族が龍の子孫であることを表している。故に作品の名前は「華夏文明」と称される。
昭和62年(1987年)5月10日
中国上海市工芸品分公司より輸入
中国の貴石 -鶏血石(けいけつせき)-
鶏血石とは、朱砂と葉臘石(ようろうせき)が共生した天然石で、鶏の血のように鮮やかな赤い色であることからこの名がついた。産出量は少なく高価で、印材として用いられるほか、収集家も多い。古くから珍重されており、清朝の康熙帝や乾隆帝なども好んだという。ただ、最近では鶏血石の原石は非常に少なくなっており、このような大きな鶏血石は滅多に見られない。
- 萬龍戯珠 (ばんりゅうげいしゅう)
- この作品は、鶏血石の色の変化をたくみに利用し、中国の伝統的な浮き彫りの手法を駆使した名品である。雲や霧に乗って、珠宝を奪い合いする、いわゆる「万龍戯珠」という壮麗な場面を描いている。波浪の文様は深海の竜宮城を意味する。
昭和62年(1987年)5月10日
中国河北省工芸品公司より輸入
多層塔形玉薫炉 (たそうとうけいぎょくくんろ)
材料:岫玉(しゅうぎょく)、河南玉(かなんぎょく)
薫炉の由来:薫炉とは香を焚く器のことで、香炉より発展したもの。
その歴史は春秋戦国の時代まで遡る。主に透かし彫りの技法を使うことにより、香気成分を発散させる。
一つの大きな玉(ぎょく)に彫刻したもので、驚くべきことに、丸い環(わ)は繋いだものではなく、彫られたものである。また、現在の中国ではこれだけ大きなものは希少である。
昭和62年(1987年)3月31日
中国工芸品進出口公司天津分公司より輸入