いのちの花
2010.01.13
生命が新生していく初春の頃は、一年の中でも特に改まった気持へと誘うシーズンです。この祈りを意識する季節に、成川美術館では世界に広めたい優れた日本の美質、花の絵を展観中です。本展には、初春を飾るにふさわしい色彩の華と現代日本画の美しさとが横溢しています。世界中の観光客を魅了する現代日本画の代表的な花の絵を選りすぐった絶好の機会です。古代人は、飾り羽や色とりどりの花を身につけて、さらに絵の具で身を塗り重ねました。近年の研究ではネアンデルタール人が貝がらを装身具や絵の具皿に活用したそうです。美をめぐる「花鳥画」のルーツも、人類発生にまでその起源は遡るでしょう。
鳥にように飛ぶことも動物のように走ることもできない花たちは、相手がやって来るのを待ちます。花の美しさは、「千客万来」の待ちの姿勢と関係が深いようです。子孫を残すために美しい花を咲かせて、かぐわしい香りとともに蜜を提供する植物は、生命の根源性と美の至高性とを一致させます。花は、永遠の生命と美とを象徴する重要な絵のテーマです。
新春の晴れやかさを愛でながら、この特別な新生の時期に、箱根の白富士と現代日本画の花の精華とを満喫するのはいかがでしょうか。(写真は倉島重友「白い響」)