当館所蔵の作品が浅田次郎の新刊のカバーになりました
2011.01.18
「週刊文春」で好評連載されていた浅田次郎氏の「一刀斎夢録」が、今年1月10日に文藝春秋社より発売されました。映画化もされ国民的ベストセラーとなった「壬生義士伝」そして「輪違屋糸里」とともに浅田版新撰組三部作をなす堂々の長編歴史小説で、新撰組最強の剣士・斎藤一に焦点を当てた内容となっています。この書籍の装丁に、当館所蔵の牧進画伯の「幽邃」(ゆうすい)という作品が使用されています。
牧進画伯は、師・川端龍子の内弟子として少年時代から厳しい薫陶を受け、青龍社解散により無所属となった後は、兄弟子であった横山操の指導を受けながら個展を中心に発表を続けました。大和絵や琳派的な伝統的要素を取り入れながら、現代的かつ洗練された感覚で独自の花鳥画を描き、現代の日本画壇に異彩の輝きを放っています。また、生前の川端康成に知遇を得て、川端文学に想を得た作品も多く、川端康成本人からも、個展に際して「牧進讃」を贈られています。
いまや巨匠の名に恥じない日本美の求道者・牧進の絵と、国民的作家である浅田次郎の歴史小説は、まさにふさわしい取り合わせといえるのではないでしょうか。「幽邃」の妖しい雲行きをみせる移ろいゆく夜空の情景と、「一刀斎夢録」で描かれる剣士の壮絶な生死の相克が重なって独特の世界観を生み出しています。
現在、当館では「雪日月花 日本美の精華」展にて、この牧進画伯の「幽邃」を展示中です(3月15日まで)。是非会場でご覧下さい。