画期的なアート
2008.06.23
米倉健史さんが独自に創案したキルト・アートは、現代の日本画表現に案外近い。その風合いや布の物理的な厚みには、時代が求めてきた豊かな香りが漂います。その精密な線は日本画の下図に近似しています。日本画の下図には、塗る色がメモされたりもします。米倉さんの「下図」は、織り子さんが染め布を切って忠実に縫いあげていく拠り所であるだけに、色を数字で表した完璧な設計図です。その観点に立てば、作家は、画家であり、デザイナーであり、建築家のようなものです。また米倉作品の映像には、自画像のようにスポーティーな自転車がカップルで現れ、スニーカーが描かれ、紙飛行機や竹ひごプロペラ機が空を飛んでいます。少年の日の夢が投影され、モダンで軽快な開放感がすがすがしい表現です。
数え切れないほどたくさんの染め布を、まるで絵の具のように自在に使いこなした色彩のマジックです。多重映像と直線や円形を活用した明晰なイメージには、不思議な夢がロマンの香り豊かに展開されています。ひと針ひと針、縫い上げていく手作業のぬくもりも感じられます。繊細で暖かい肌合いがかもし出されています。鬼才の名にふさわしい類例のないアーチストです。
1階第1展示室には約50点展示。代表作の数々と、絵本の原画等で、米倉健史の夢と冒険の世界を大展観中です。そして2階の小展示室にも20点ほどのオリジナル小品を厳選して展観。こちらは作家の特別のはからいで、作品をおゆずりいたします。床の間ではなくリビングにふさわしい21世紀のアートの魅力を、ご自宅で即日ご鑑賞、ご堪能いただけます。どうぞご希望の方は、お気軽にお声をかけてください。(学芸部)